INTERVIEW

「五感で楽しむパルミジャーノ・レッジャーノ、美味の道 料理家・杉山恵美さんが紡ぎ出す一千年の時を感じる饗宴」イメージ

五感で楽しむパルミジャーノ・レッジャーノ、美味の道 料理家・杉山恵美さんが紡ぎ出す一千年の時を感じる饗宴

千年の時を超えて受け継がれるパルミジャーノ・レッジャーノの魅力を、料理家・杉山絵美さんが夏の華やかな一皿で表現するイベント「五感で楽しむパルミジャーノ・レッジャーノ美味の道」が開催。親しいゲストを招いたランチとディナーで、その奥深い味わいと無限の可能性が披露された。

食は五感で楽しむもの。禅の教えから心も体も喜ぶ食事を考える

杉山絵美さんは、大学卒業後、イギリスへ留学し、フラワーアレンジメントとパーティプランニング
を学んだ。そこでもてなすことの本質に触れ、人の心に訴えるものとは何なのかを考える術を身
につけた。帰国後はハイブランドのPRとして数々の企画を打ちたて、成功に導いた。それと同時
に食への飽くなき探究心に突き動かされ、世界各地を旅して回る。様々な食文化に触れるうちに
料理家としての活動を本格的に開始。レシピ開発はもとよりレストランプロデュースなど食の分野
において幅広く活躍している。


杉山さんの食についての基本的な理念は、五感で楽しむこと。心と体を同時に満たすことが大切
だと言う。「食べることは人生の楽しみです。そして食べたものから身体は作られる。禅の教えに
習い『食』をいただくことの感謝の心を持ち、人生を豊かにしてくれる食事であること、それがレシ
ピを考え、実際に料理を作る時に一番大切なことだと思っています」

具体的に、パルミジャーノ・レッジャーノを五感で楽しむというのはどういうことだろうか。
「食事は味わうだけでなく、その時の会話や料理の盛り付けなどプレゼンテーションも大切です。
その点においてまず、パルミジャーノ・レッジャーノには様々なプレゼンテーションの可能性があり
ます。そのまま大きな塊でお出しすることもできますし、お客様の目の前で削って雪のようにふり
かけたり、スライスしたり、視覚で楽しんでいただけるのです」

さらに杉山さんは、パルミジャーノ・レッジャーノの起源について気づいたことがあると言います。
「千年も昔に修道院で作られたというこのチーズは、日本の禅寺の文化にもつながるので
はないか、と。私はコロナ禍の頃、永平寺で修行体験をしたのですが、お寺も、修道院も、
祈りを捧げるところであると同時に、発酵食品や保存食が作られてきたところでもありま
す。日本のお寺でお味噌を作りますが、お味噌には数ヶ月かかるものもありますし、パルミ
ジャーノ・レッジャーノは熟成に12ヶ月以上を要します。どちらもゆっくり時間をかけて、伝
統の製法に則って、そして自然の力に委ねて手を加えすぎず、静かな祈りとともに発酵、熟
成させるものなのです。日本のお寺から発展した食文化とイタリアの修道院から生まれた
食文化という共通点に気づいた時、私の中ですとんと腑に落ちました。パルミジャーノ・レッ
ジャーノもお味噌も千年以上もの長い間守られてきたもの、どちらも本物の味わいを持って
いるのだ、と」

長い時をかけて風土に育まれたものは、未来に継承されるべき

自然と向き合い、職人が丹精込めて作るパルミジャーノ・レッジャーノには、人と自然の調
和という哲学的な背景もある。モデルとして真の美しさ、そして健やかさというものについて
考えてきた長谷川理恵さんにとって、パルミジャーノ・レッジャーノはどのような食材だろう
か。

「私は鎌倉に住んでいるのですが、周りでシェフですとか、友人たちが畑で野菜作りをして
いて、たまにそのお野菜やハーブをいただくのです。最近は特に昔ながらの伝統野菜に着
目した方たちが多くて、その伝統野菜を使ったサラダなどに、昔ながらの独特な風味や苦
味といった野菜本来の味をしみじみと感じています。昔ながらの製法だったり伝統技術で
作られたものって、その風土に合っているのですよね。本当にいいものが未来に継承され
残っていったらいいなと思います。そういう意味で、パルミジャーノ・レッジャーノも、美味し
いだけではなく自然にも環境にもとても優しい、素晴らしいものだと思います。科学の技術
に頼らない、その土地の持つエネルギーがぎゅっと詰まっているところが、鎌倉の伝統野
菜とリンクしていると感じています」

WabiYoga(侘びヨガ)という茶道の動きをもとにしたヨガを習得された長谷川さんは、日本
の伝統の“道”の観点からパルミジャーノ・レッジャーノをどう捉えているのだろう。

「WabiYogaは、鎌倉の山田宗徧流家元の奥様の山田宗理さんが発案したヨガで、派手な
動きはなく、軸を整えるということが一番大事。そして軸を整えるとともに、日頃の現代人が
抱えているストレスから来る力みを軽減させるために考えられたヨガです。お茶室、つまり、
畳の上でやるのですが、例えばすり足でお茶を運ぶといったすごく静かな動きです。体の
中で一本強い軸が整っていて、木に例えると柳のような、どんなに風が強くても、しなやか
で決して折れることがない、そういうところは、パルミジャーノ・レッジャーノ道にも通じている
のではないでしょうか。道、というと、固いイメージがあるかもしれませんが、あくまでも柔ら
かく、自然体で伝統というものを守っていく、そして次の世代に伝えていくというところが道
の本質で、パルミジャーノ・レッジャーノにも同じものを感じます」

ご家族と暮らす時間を大切にする長谷川さんにとって、家族から受け取り、そして自分に影
響をもたらしてきたものとは何なのか。

また、今年 80歳になる母は料理研究家でして、鎌倉で料理のサロンをかれこれ40年ぐらいやっ
ているのです。長崎出身の母は当地の伝統料理、例えば皿うどんを大皿料理として作ったりする
のですが、それがすごく大変そうで。以前は受け継ぐ気はありませんでしたが、近頃はやはり自
分がやりたいと思うようになってきました。また、私は子供の頃、ベルギーに住んでいたことがあ
り、その時は母もベルギーで家庭料理を習っていたのです。昔ながらの、きらびやかではないけ
れど、本当に食材を大事にした食事というものを教わって。それも今の母のお料理のベースと
なっていて、食材の良さを生かしたところに、今あらためて感じるものがあります。自分が子供の
頃に体験した食事環境を母から継承して、それを伝えていきたいと思っています」

「子供を産む前から良い食材を選ぶようにしていましたが、母親になって息子に食事を作る
ようになって、より安心で安全で、そして美味しいものを作ろうという意識が働くようになりま
した。今は息子が成長期に差し掛かって、ものすごく食べるので作りがいもありますし、彼
のリクエストがまた細かくて。今日はトマトベースのソースで、パスタはこれで、といった具
体に。ともかく、息子の笑顔が見たくて日々食事を作っているのですが、それが自分にとっ
ても楽しく喜びであったりします。

普段の暮らしで長谷川さんはどのようにパルミジャーノ・レッジャーノを楽しんでいるのだろう。
「我が家は本当にイタリアンが多くて、いろんな料理に削ってかけていただいています。最
近ですとイタリア風のパン粉料理ですね。イタリアはパン文化ですから、余ったものもパン
粉にして、さらに味をつけて、色々なお野菜、お魚をなどに使える万能な香草パン粉にし
て。ハーブとパルミジャーノ・レッジャーノの組み合わせは香りとコクをもたらしてくれますか
ら、シンプルなあっさりした白身魚に合わせたり、スパイス的なイメージです。パルミジャー
ノ・レッジャーノを入れることによって味が引き立ちますし、奥行きも広がりますね」

前菜からデザートまで、パルミジャーノ・レッジャーノの真髄を味わう

今回は、12ヶ月熟成の若いもの、24ヶ月熟成のミルキーな香りと旨みのバランスが絶妙な
もの、36ヶ月熟成の旨みがしっかりと凝縮したものまでを使い、前菜からデザートまでの5
皿全てにパルミジャーノ・レッジャーノが登場する。ベースとなるのは24ヶ月熟成のもの。ど
んな使い方をしてもそれぞれの皿の味わいの構成を整えてくれるからだという。


「36ヶ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノはそのままで主役になります。まず口の中に入
れた瞬間に柔らかい塩味と旨味、その後にナッツのような香ばしさ。それから甘味が広が
り、口の中に柔らかく残るのです。そして、口中に残るチーズの旨味がすごく優しい余韻と
なるのですが、それが驚くほど長く続きます。これはコースの最後、デザートの前にお出し
しようと決めました」

杉山さんが考案したのは、前菜に始まり、リゾット、魚料理、肉料理、そしてデザートという
コースで、まず前菜には削りながら雪のようにふりかけて、リゾットでは溶かし込んで、魚料
理ではソースに混ぜ、肉には36ヶ月熟成のものをスライスしてたっぷりかけ、デザートの
チーズケーキは生地に混ぜ込んだ上に焼く前にもふりかける。まさに、下ごしらえから食卓
でのプレゼンテーションまで、多彩な使い方ができるのがこのチーズの本領である。


「今の時代、簡単に早く作れる方法を模索する傾向はますます加速しています。それはそ
れでいいと思いますけれど、やはり、ゆっくり自然の力で作られた本物と、急いで作り上げ
たものの味わいの違いを、このコースを通して皆様に感じていただきたいと思います」

1皿目は「ズッキーニのカルパッチョ パルミジャーノ・レッジャーノとレモンの香り」。薄くスラ
イスしたズッキーニに、オリーブオイルをかけ、パルミジャーノ・レッジャーノを雪のように削
りかける。最後にレモンを絞って完成。削りたてのパルミジャーノ・レッジャーノの芳醇な味
わいとレモンの爽やかさが見事な調和を見せ、これから始まる食事への期待感が高まる、
華やかな幕開けの一皿。

2皿目として供されたのは「パルミジャーノ・レッジャーノとトマトのリゾット 生ハムを添え
て」。パルミジャーノ・レッジャーノを使う代表的な料理の一つ、リゾット。しかし、リゾットは時
間がかかる上につききりで仕込まなければならないのが悩みの種。そこで杉山さんが編み
出したのは、炊飯器を使う方法。トマトと玉ねぎを米と一緒に炊いた後、鍋に移したら5分で
仕上がるという。最後にすりおろしたパルミジャーノ・レッジャーノを加え溶かして味を整え
る。トマトの酸味、生ハムの塩味、そしてパルミジャーノ・レッジャーノの旨みが一つになっ
て、深い滋味の世界へと誘う。

3皿目は「白身魚のポワレ 小松菜ジェノヴェーゼ風」。真鯛やスズキなど淡白な白身魚を
蒸し焼きにして、バジリコの代わりに小松菜を使ったペスト・ジェノヴェーゼ風ソースを添え
る。バジリコは時間の経過とともに色が変わるが、小松菜の緑はいつまでも鮮やかさを失
わないため、目にも楽しいソースとなる。その上、小松菜独特のほのかな苦味がパルミ
ジャーノ・レッジャーノの旨みと出会い、日本らしいまろやかさをもたらしてくれる。白身魚の
繊細な味を引き立てるこのソースは、他にも、例えばそのままバゲットなどパンに添えて食
前酒のおつまみにも良い。

コースのクライマックスは「牛肉のタリアータ オレンジ香るバルサミコソースとパルミジャー
ノ・レッジャーノ」。赤身の牛肉を塊のまま表面をこんがりと焼き、5ミリ程度の薄切りにして
盛り付け、36ヶ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノをスライスしてたっぷりとかける。最後
にバルサミコ酢、赤ワイン、醤油、イタリアのオレンジママレードを煮詰めたソースを添え
る。赤身肉に熟成したパルミジャーノ・レッジャーノの凝縮した旨みが味わいに奥行きを与
え、ソースの酸味と甘みとコクがアクセントとなった、印象的かつ満足感の高い一皿。

デザートは「トレ・フォルマッジのクリーミーチーズケーキ」。杉山さん曰く、チーズケーキに
する場合、パルミジャーノ・レッジャーノと他のチーズとのバランスを図ることが一番のポイ
ントである。そういう点において同じイタリアのマルカルポーネとニュートラルなクリーム
チーズがベストな組み合わせとなったという。ふんわりと優しいテクスチャーの中に、生地
に使った甜菜糖の甘みとパルミジャーノ・レッジャーノの旨みと塩味が絡み合い、甘すぎ
ず、心地よい余韻が続く、コースの流れを昇華させる見事なフィニッシュとなった。

すべての料理を味わった長谷川さんは、「どのお料理にもチーズが使われているのに、
まったく重さを感じませんでした。流れが自然で軽やかで。パルミジャーノ・レッジャーノの
素晴らしさと、杉山さんの食材への深い造形と愛を感じる、とても素敵なひと時でした」と称
賛。


ゲストの喝采に迎えられた杉山さんは、「イタリアの一千年の歴史の中で育まれてきたとい
う、それを味わえることがこのチーズの一番の魅力だと思います。長い時をかけて私たち
のもとに届けられた恵をいただく、その感動を皆さんと共有することができ、本当に嬉しく
思っています」と、“美味の道”を締めくくった。

※パルミジャーノ・レッジャーノが認定を受けるPDOとは:
パルミジャーノ・レッジャーノは、EUの原産地名称保護(PDO)に認定されているチーズです。添加物や保存料
を一切使用せず、伝統的で自然な製法によって作られています。また、世界で最も模倣や偽造が多いチーズの
一つでもあり、PDO制度はこのような製品の呼称や品質を守るために設けられています。


*パルミジャーノ・レッジャーノ チーズ協会(CFP)のこの活動は、プログラム101194314 ENO-E
(欧州連合規則第1144/2014号に基づく)として欧州連合の共同資金の助成を受けています。