INTERVIEW

「円相から広がる新たな世界 和の心でひも解く、パルミジャーノ・レッジャーノの深い魅力」イメージ

円相から広がる新たな世界 和の心でひも解く、パルミジャーノ・レッジャーノの深い魅力

2025年にスタートした「パルミジャーノ・レッジャーノ道」。その象徴として生まれた円相を起点に、パルミジャーノ・レッジャーノが持つ自然や伝統、職人の技、味わいなどの奥深い価値を、日本文化の視点からひも解いていく。1年を経て、円相から「三角」「四角」へと広がる新たな表現に込めた思いを、書家・中塚翠涛(すいとう)氏に聞いた。

1年を経て広がった「パルミジャーノ・レッジャーノ道」の世界観

『自然』『伝統』『本物』『美味しい』『楽しい』。昨年提唱されたこの5つの言葉は、パルミジャーノ・レッジャーノの個性や世界観を伝えるもの。日本の文化の中で、チーズの作り手が大切にしてきたものやこだわり、その価値を直感的に理解できるように選ばれたワードだ。

この1年、多くのイベントやレシピ、さまざまな体験を重ねる中で、「道」というコンセプトが人々の中に少しずつ息づき始めていることを実感した。パルミジャーノ・レッジャーノ道の象徴である円相は、禅の世界では、悟りや真理、そしてすべての人が生まれながらに持っている本質や可能性を象徴している。禅の世界観とパルミジャーノ・レッジャーノは、一見すると別世界のものに思えるかもしれないが、円相という一本の線と5つの言葉によって、パルミジャーノ・レッジャーノの価値や背景、そして個性が表現されているのだ。

パルミジャーノ・レッジャーノ道のロゴ。円相は、カットされる前のチーズのかたちを表すとともに、パルミジャーノ・レッジャーノの秘めた価値を表現したものでもある。

中塚さん

「1年前にお話をいただいた際、『パルミジャーノ・レッジャーノ道』というコンセプトについて一緒に考える機会をいただきました。私は幼い頃から書道に親しみ、『道』の世界の中で筆とともに生きてきました。一方でパルミジャーノ・レッジャーノも1000年近くもの長い年月、ほぼ変わらぬ製法を守り続け、職人たちがそれを大切に育て、道を歩んできたと思います。その歴史や精神を、自分の一本の線で表現させていただけることに、大きな意味を感じました。

では、どのような線がふさわしいか。円相は一見するとただの丸ですが、紙に筆を置く角度や力加減、墨の濃淡によって表情が大きく変わります。そうしたことを意識しながら、パルミジャーノ・レッジャーノの職人の方々への敬意や伝統への想いを重ねて描き上げたのが、昨年の円相でした。

円から○・△・□へ、新たな表現のかたち

1周年を迎えた「パルミジャーノ・レッジャーノ道」は、その世界観をさらに深く伝えるため、新たな表現へと歩みを進めた。その象徴となるのが、「円」に加わった「三角」と「四角」である。

円相はこれからもブランドを象徴する存在であり続ける。一方で、三角や四角が加わることで、新たな遊び心や広がりが生まれた。パルミジャーノ・レッジャーノはカット前の状態は円形だが、カットされたチーズは見る角度によって三角にも四角にも見える。視点や場面の違いにより、異って見える(感じる)のもパルミジャーノ・レッジャーノの魅力。その世界観を表現するのが丸・三角・四角というコンセプトだ。

三角は誕生や変化、あるいは一点からエネルギーが広がっていく様子を表し、四角は形が定まり、現実の世界に存在する状態を表す。そして円(円相)は、調和や完成を象徴する。こうした三つの形は、自然から生まれ、発酵によって熟成し、完成したチーズが人々に喜びや美味しさという感動を与えるなど、新たな価値へと循環していくパルミジャーノ・レッジャーノの歩みとも重なっている。

書家、アーティストの中塚翠涛(なかつか すいとう)氏(左)と、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会 日本事務局のティツィアナ・アランプレーゼ氏(右)。

中塚さん

「円相が生まれたことで、新しいコンセプトもそこから派生していくと思います。決して別のものになるのではなく、足し算や掛け算のように広がっていく。この1年間を通して感じた喜びや豊かさ、暮らしの中で育まれた感覚を、三角や四角という新たな形の中に表現できたら素敵だと思いますね」

自然から「気」へ

ここからは、5つのキーワードから生まれた新たな価値について紹介する。

パルミジャーノ・レッジャーノの最大の価値のひとつは、自然であること。加工食品や超加工食品があふれる今の時代に、パルミジャーノ・レッジャーノは約1000年前から続く伝統的な素材と製法で作られていて、牛は同じ土地の牧草を食べ、その牛からとれたミルクから作られる、とてもピュアな食品だ。

「自然」という価値をさらに一歩深めた言葉として選ばれたのが、『Energia(気)』である。自然には生命力があり、すべてのエネルギーは自然から生まれる。そうした流れを表すのが「気」であり、その活力を表す言葉として『Energia(気)が選ばれた。

中塚さんは次のように話す。

「日本語の『気』には、元気、やる気、活気など、さまざまな意味があります。気の巡りは、人の健康や心の状態にも関わっています。目には見えませんが、人や自然、空間をつなぐ大切な力です。『自然』と『気』の結び付きを感じたとき、すべてがひとつにつながったような感覚がありました」

『気』とは、目には見えないけれど確かに存在する生命の力。おいしいものを食べると元気になるという人は多いだろう。大自然が生んだパルミジャーノ・レッジャーノが本質的に持つパワーとも重なるのだ。

伝統が育む「時」

次に語られたのは、『伝統(Tradizione)』である。パルミジャーノ・レッジャーノは単なる高品質なチーズではない。地域の歴史や文化、職人たちの知恵、酪農家とチーズ職人のコミュニティの営みが積み重なって生まれた存在だ。

伝統とは、今を生きる私たちだけのものではない。何世代にもわたる人々が受け継いできた幾重にも積み重なった『時間』から紡ぎ出されたものである。

その伝統を表現する新しい言葉として選ばれたのが、『Tempo(時)』である。伝統を理解し、継承し、価値として感じるためには長い時間が必要だ。そして同時に、私たちがパルミジャーノ・レッジャーノを味わうその瞬間もまた、『時』である。何百年、何千年とかけて受け継がれてきたものが、最後には一瞬の感動として私たちに届く。その一瞬もまた、とても大切な時間だ。

中塚さんは、その言葉に「見えない職人たちの手の記憶」を感じるという。

「長い年月をかけて受け継がれてきた想いが、ひとつのチーズの中に宿っているように感じました」

本物が生む「調和」

「本物(Autentico)」は、パルミジャーノ・レッジャーノの存在そのものを象徴する言葉だ。厳格なPDO(原産地名称保護制度)のもと、決められた地域と製法で作られたものだけがパルミジャーノ・レッジャーノを名乗ることができる。つまり本物であることは、このチーズにとって絶対に欠かせない価値である。その本物という言葉には、さまざまな意味が含まれる。唯一無二の存在であるというだけではない。

大きな塊でも、小さく切り分けられた一片でも、どこを口にしても変わらない品質と味わい。その背景には、自然の恵み、受け継がれてきた伝統、そして職人の技。そのすべてが調和することで、本物だけが持つ価値が生まれる。

美味しさを支える「良質」

「美味しい(Buono)」は、パルミジャーノ・レッジャーノの魅力を伝える最もシンプルでストレートな言葉だ。 「イタリアでは、パルミジャーノ・レッジャーノが嫌いという人に会ったことがない」と言われるほど、メジャーな存在。子どもから大人にまで愛される存在だ。

しかし、ただ美味しいだけではない。長い伝統や自然環境、職人の技術によって支えられた美味しさ。それを表現するのにふさしい言葉が、『Qualità(良質)』だ。 中塚さん自身も、この1年を通じてその意味を実感したという。サラダやスープ、和食など、さまざまな料理に取り入れる中で、このチーズは単なる調味料ではなく、料理全体の質を引き上げる存在であることを実感したという。

「生活の中に自然に取り入れるほど、本物の美味しさと良質さを強く実感するようになりました」と中塚さんは言う。

書家、アーティストの中塚翠涛(なかつか すいとう)氏。大河ドラマの題字や企業ロゴ、パッケージデザインなど、幅広い分野で活動。アートワークでは、墨の中に広がる色彩の表現を探求しながら、文字を起点とした絵画的な作品や、旅先で出会った光や音の記憶をテーマに制作を続けている。

心に響く、食の歓び

最後のキーワードは、『楽しい(Buonumore)』から発展した『Emozione(響)』だ。 もともと『楽しい』は、パルミジャーノ・レッジャーノが人が集まる場で、人々の笑顔を生み、食卓を豊かにする存在であることを表した言葉だった。その楽しさをさらに深いレベルで表現する言葉として選ばれたのが、『響』である。そして、その感覚をイタリア語で表わすのが『Emozione(エモツィオーネ)』だ。

心の中で小さく跳ねるような喜び。その感動が人から人へ伝わり、広がっていく。本当に感動したとき、人は『心に響く』と言う。本当に美味しいものに出会ったときも同じ。その小さな心の動きこそが、食においてはとても大切なこと。

こうしてパルミジャーノ・レッジャーノという道のコンセプトは進化し、「自然」「伝統」「本物」「美味しい」「楽しい」という価値観は、「気」「時」「良質」「響」「調和」という新たな表現へと発展した。

中塚さんは、その流れを振り返りながらこう語る。

「長い年月をかけて受け継がれてきたパルミジャーノ・レッジャーノの価値が、こうした言葉として表現されている。そしてその言葉が、また新しい人へと受け継がれていく。その姿そのものが、『道』なのだと思います」

「パルミジャーノ・レッジャーノ道」は、○・△・□という新たな象徴を得て、さらなる歩みを始めた。それは、パルミジャーノ・レッジャーノが多くの人々の暮らしや食卓の中で育まれ、新たな出会いや発見を重ねながら、より身近な存在として親しまれていく姿でもある。

「パルミジャーノ・レッジャーノ道」の新ブランドムービー。映像を手がけたのはクリエイターBird氏。映像・ビジュアル・キャラクター表現を軸に、学校・企業・美術館・アーティストなど、幅広い分野のイメージ映像を手がけるクリエイター。光・色・質感を活かしながら、近未来的な世界観と自然の空気感を織り交ぜ、見る人の想像力を広げる映像表現を追求している。

写真 望月勇輝

※パルミジャーノ・レッジャーノが認定を受けるPDOとは:
パルミジャーノ・レッジャーノは、EUの原産地名称保護(PDO)に認定されているチーズです。添加物や保存料を一切使用せず、伝統的で自然な製法によって作られています。また、世界で最も模倣や偽造が多いチーズの一つでもあり、PDO制度はこのような製品の呼称や品質を守るために設けられています。

欧州連合規則 第1144/2014号に基づくプログラム101194314 ENSO-EU ― 欧州連合の共同出資による。
※EU規則1144/2014に基づく、EU支援の農産物販促プロジェクトです。