STORY

「円」に込められた意味。

筆が動く。

しなやかに進む彼女の手先に迷いはなく、自信に満ちているように見える。

何度も同じ軌跡を辿ったことだろう。

けれども同じ文字を描いても出来上がる作品は毎回違う。

まるで一期一会の出会いを楽しんでいるかのような、生き生きとした息遣いを感じる。

円相とは、一筆で描かれた円を表す。

完全無欠な円は、人々に安心や喜びを与え、過去から未来へと続く流れを感じさせる。

先達からの教えを守りながら、そこに自身の経験と情熱を重ねていく。

日々の鍛錬の積み重ねにより行き着く領域。筆先に先達への敬意、作品と向き合う精神、内に秘めた情熱が滲み出る。

円相に完成はなく、その時々の書家の心、その日の空気や空の色もが作品に影響をもたらすこともあるという。

完成した作品を見た人がどう捉え、何を感じるか。

答えはいつも違う。異なって然るべきなのである。

書家、中塚翠涛さんは言う。

「書道は一本の線に思いや物語を込める芸術であり、心を表現するためには技術や技能の追求だけでなく、日々の鍛錬が重要になります」。

そして自身のシグネチャー作品である円相について次のように述べた。

「円相は心の窓とも言われています。真円の形の美しさに目を奪われますが、同時にその1本の線には、書家がこれまでに積み重ねてきた鍛錬や経験が込められます。私自身、1本の線にどれだけの物語を紡げるかを常に意識し、作品づくりに向き合っています」

長い時間をかけて紡がれてきた伝統や人々の想いが込められた円相。

それはまさにパルミジャーノ・レッジャーノの歩みと重なる。

当Webサイトでは、パルミジャーノ・レッジャーノにまつわるさまざまなストーリーを紹介していく。

ABOUT

パルミジャーノ レッジャーノは、
どんなチーズか

北イタリアの特定の地域で約1000年前から天然の原料を使い、ほぼ同じ製法で作り続けられているパルミジャーノ レッジャーノ。その自然の恵みから生まれたチーズは、どのように作られているのか。パルミジャーノ レッジャーノの美味しさの秘密を紹介します。

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パルミジャーノ レッジャーノについて

パルミジャーノ レッジャーノは、北イタリアのごく一部の地域で育てられた乳牛から採れる生乳、塩、それに天然の凝乳酵素のみを原材料とするチーズです。自然な製造方法により凝固したミルクは、熟成庫に運ばれ、最低12ヶ月、長いものでは48ヶ月かそれ以上、棚の上で熟成されます。熟成したチーズの塊は、熟成期間が終わると検査員によりチーズの組織が分析されます。検査はひとつひとつ手作業で行われ、品質が保証されたパルミジャーノレッジャーノのみにそれを証明する焼印が押され、市場へ出荷されます。天然の原料のみを使い、チーズ職人によって丁寧に手作りされたあと、長期の熟成によって完成する上質なチーズ。それがパルミジャーノ レッジャーノなのです。

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どこで、どのように作られているか

パルミジャーノ レッジャーノは、北イタリアを西から東へと流れるポー川とレノ川、アペニン山脈の間に位置するロンバルディア州からエミリア・ロマーニャ州にまたがる5つの県(パルマ県、レッジョ・エミリア県、モデナ県、マントヴァ県、ボローニャ県)からなる指定産地で製造されています。この土地で育つ乳牛の生乳のみが使用され、他の地域や外国産の牛乳でパルミジャーノ レッジャーノが作られることはありません。また乳牛の飼料となる牧草の多くがこの地域で調達されます。この地域では牧草が安定して育ち、それに含まれるプロテインが乳牛の栄養補給を行います。

1日に2回、早朝と夕方に搾乳されたミルクは2時間以内に地元のチーズ工房へと運ばれ、その日のうちにチーズ作りが始まります。夕方のミルクを大きなタンクで一晩寝かし、脂肪の分離が行われます。分離されたミルクは翌朝に絞られたミルクと混ぜ合わされた後、天然の乳酸菌を多く含む乳清を加え、発酵を促します。その後、一定の温度で凝固したミルクから水分が抜かれ、チーズの塊ができます。

このチーズの塊にはパルミジャーノ レッジャーノならびにDOPの文字と共に、製造したチーズ工房のマークと製造年月を示す刻印が押されます。その後20日間、飽和食塩水に漬けることで水分を外に出し、外皮が固められます。その後、最低12ヶ月、長いものは48ヶ月以上、熟成されます。このように長期熟成が可能なのは、地域の飼料を食べて育まれたミルクに豊富な乳酸菌が含まれているため。添加物や保存料は一切使用していません。

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美味しさの秘密について

パルミジャーノ レッジャーノは、熟成期間の長さによって、味わいや風味が変化します。熟成期間は最低12ヶ月と定められていますが、パルミジャーノ レッジャーノならではの深みや味わいが醸成されるのは24ヶ月が経過した頃です。また、36ヶ月、48ヶ月、あるいはそれ以上寝かせると、長期熟成ならではの独特の味や香りが増します。

熟成の過程で、乳酸菌が出す酵素の作用により、タンパク質はタンパク質鎖の基礎となる遊離ペプチドとアミノ酸に分解されます。このタンパク質の分解作用が、パルミジャーノ レッジャーノの独特の食感と美味しさを生み出します。

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パルミジャーノ レッジャーノならではの特徴

パルミジャーノ レッジャーノは、指定された産地でのみ製造が認められていますが、このエリアに育つ乳牛の数は約25万頭。これらは主に4種類の品種に分かれ、それぞれ異なる特色の生乳を生み出します。チーズ職人はそれらのミルクから作ったチーズの熟成期間を12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月などと選ぶことができます。これにより、地域独特の香りや風味を持つ多様なパルミジャーノ レッジャーノが生まれるのです。

一定の熟成期間を迎えたチーズは、熟練した検査員によりひとつひとつチーズの組織が分析され、合格したチーズにのみ楕円の焼印が押され、市場に出荷されます。

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パルミジャーノ レッジャーノの起源とその歩み

パルミジャーノ レッジャーノの起源は、およそ1000年前。中世にまで遡ります。この地方の広大な土地を有していた修道院が長持ちさせられる食品として、チーズの製造に着手したと伝えられています。彼らはチーズを乾燥させ、1玉のサイズを大きくすることで、賞味期限が長く、生産地から遠く離れた場所まで輸送できるチーズを実現したのです。その後、時代の変化に合わせて製造技術の向上や、チーズ消費量の拡大により需要は拡大。高品質なチーズとして名声を獲得したパルミジャーノ レッジャーノは、イタリア全土に名が広まっただけでなく、海外にも輸出されるようになりました。

1934年にはパルミジャーノ レッジャーノの保護団体としてパルミジャーノ レッジャーノ コンソーシアムが設立され、原産地呼称(PDO)を保護すると共に、製品の特性を守りながら、この高品質なチーズを世界に向けて発信しています。現在、パルミジャーノ レッジャーノは年間に約16万1000トンが製造され、約6万4000トンが海外へと輸出されています。