2026.06.01
五感をひらき、食と向き合う。
「Zen Eating」とパルミジャーノ・レッジャーノの出会い
食べることは、本来もっと豊かで静かな体験だったはずだ。禅の思想をベースにした“食べる瞑想”「Zen Eating」は、そんな感覚を現代に呼び戻すアプローチである。提唱者・ももえさんに話を聞くとともに、パルミジャーノ・レッジャーノを通じて、その世界観をひもといた。
一口の中に、世界がある
人が本来持っている「食べることの喜び」や、そこから生まれる“豊かな時間”。それらを取り戻すための“食べる瞑想”「Zen Eating」を提唱しているのが、ももえさんだ。
禅をベースに編み出したこのアプローチは、時間をかけて食べるという行為を通じて、心と体をととのえ、不安や心配事から距離を置き、自分自身を取り戻すことへとつながっていく。また、禅を通じて自然とのつながりに思いを馳せるその世界観は、天然の原料から生まれるパルミジャーノ・レッジャーノともどこか響き合うものがある。
そこで今回は、ももえさんに話を伺うとともに、パルミジャーノ・レッジャーノを用いて実際にZen Eatingを披露していただいた。

まずは、その思想の原点となる背景について聞いた。
―― Zen Eatingは禅と食べるという行為を結びつけたアプローチだと思いますが、まず、ももえさんが禅と出会った背景について教えてください。
「幼少期に日本からエジプトへ移り住んで暮らした経験があり、そのときに “環境や文化によって人の感じ方は変わる”と感じたんです。だから日本に戻ってきたとき、“日本の心とは何か”に強い関心を持つようになりました。そして中学生のとき、京都の瀧安寺で『吾唯足知(われただ足るを知る)』という禅語に出会ったのです。それが、自分の人生の指針になるかもしれないと感じた、いわば“禅に恋する”ような出来事でした。
禅を本格的に学び始めたのは大学生の頃です。英語圏で禅“Zen”を有名にした鈴木大拙氏の著書を多く読み、日本の心とは何か、文化や思想によって幸福感や人生観がどう影響を受けるのかという問いを深めていきました。

また、茶道・華道・武道など、日本文化のさまざまな場面に、見える形・見えない形で禅が息づいていることにも気づきました。例えば、靴を揃える、ドアを静かに閉める、箸を整えて置く、お米を残さない。こうした何気ない習慣の根底にも禅の思想が流れている。そうした発見が、禅への愛着をさらに深めてくれました」
―― 禅と食は密接に結びついているのですね。
「禅の書物には、食との向き合い方が丁寧に書かれています。例えば日本の禅思想の根幹を作った道元氏は、『鍋を仏の頭と思って洗いなさい』『米一粒を自分の命と思って扱いなさい』と説いています。つまり、食べることや料理、掃除や歩くこと。すべてが心を磨く修行であるという考え方です。Zen Eatingも、そうした800年以上続く知恵を、現代に合う形で再編集したものだと考えています」

そんな彼女は、パルミジャーノ・レッジャーノの味わいを『いけばなのような味』だと表現した。一体、どういうことなのか。
「パルミジャーノ・レッジャーノは、豪華さで圧倒するのではなく、その味にも引き算の美しさを感じました。シンプルがゆえに空間や余白があり、受け手の感性に委ねられる余韻がある。まるで枯山水の庭のように、観る側の感性によって完成する。そんな美しさがあるように感じます」

―― パルミジャーノ・レッジャーノを口にした時の印象を教えてください。
「パルミジャーノ・レッジャーノを初めて食べたとき、『これはゆっくり口に含みたくなる食べ物だ』と感じました。口の中で味が変化し、アミノ酸の結晶の食感や、舌で崩したときの広がりなど、何層ものハーモニーが生まれる。一噛みごとの間を長く取りたくなる、そんなチーズだと感じました」
大学で禅について学び、さらに一度は企業に就職するも、あるきっかけから2年間インドに移り住み、瞑想を学んだというももえさん。瞑想が人生を平和にしてくれるという実感を持てるようになり、思い通りにいかないことに直面した時も、自分の性格が穏やかになったと感じられるようになったという。

一杯のミルクから広がる、命のつながり
―― 「Zen Eating」とはどのようなものなのでしょうか。
「Zen Eatingは、地球と自分とのつながりを取り戻す食べ方だと考えています。食べる行為自体を瞑想と捉えることで、自分の五感や身体の感覚の豊かさに気づき直すものです。現代、特に都市生活では、頭・体・心がバラバラになりがちです。まずはその状態から、自分の感覚の豊かさを取り戻す。それが第一段階です。そこから自然と意識が開いていき、食べ物がすべて大地や命の循環の中にあることに気づきます」

「例えば一杯のミルクを考えると、その元となる牛、その牛が食べた牧草、牧草を育てた土。その土は100年で1センチしか増えないと言われています。つまり、何百年もの時間が積み重なって、今ここにある。そうした時間的・空間的な広がりの中で自分が生かされていることを思い出す食べ方、それがZen Eatingです」

ミルクを例に自然と人間のつながりについて話してくれたももえさん。パルミジャーノ・レッジャーノは、土地に根ざしたチーズで、牛乳を出す牛はその土地の牧草を食べて育つ。チーズが天然なだけでなく、原産地名称保護(PDO)により、発酵飼料や遺伝子組み換え飼料が禁止されるなど、牛の飼料にもこだわっている。ミルクの質がチーズの味そのものになるからだ。
その文脈の中で、ももえさんはパルミジャーノ・レッジャーノの特徴を「つながり」という視点から語る。
「Zen Eatingでは、その食べ物が作られる様子に思いを馳せたりもするのですが、パルミジャーノ・レッジャーノは、生産プロセスが見えやすく、すべての工程に人の手と自然の力が感じられますよね。熟成も含め、見える命と見えない命が共に働いている。そのシンプルさが、五感を開き、命とのつながりを思い出させてくれるのだと思います。
一方、加工プロセスが長い食品は、どこで誰が関わったのか想像しにくい。実際にZen Eatingに参加いただいた参加者からも、「命とのつながりを感じられない」と気づいたという声が多くありました」

では、そうした食べ方の変化は、私たちにどのような変化をもたらすのだろうか。
「一つは、味わいの深さがまったく変わります。ただし『美味しく食べるため』が目的ではなく、結果としてそうなる、という感じです。私は以前、『何を食べるか(What to eat)』に強くこだわっていました。でもZen Eatingを通じて、『どう食べるか(How to eat)』との掛け合わせで美味しさが生まれると気づきました。
五感が研ぎ澄まされることで、香りや食感、口の中での変化などをより繊細に感じられるようになります。例えば、舌に乗せて呼吸するだけでも香りは変わる。そうした細やかな違いに気づけるようになります。さらに一歩進むと、自分の感覚を信じられるようになる。それは、自分の身体や存在に対する安心感につながっていきます」

一口の中に、時間や命のつながりを感じる。そんな食のあり方が、静かに心と体を整えていく。その感覚は、言葉だけでは伝えきれないものかもしれない。
動画では、パルミジャーノ・レッジャーノとともに「Zen Eating」を実際に体験できる。五感をひらき、そのひとときを味わっていただきたい。
【動画】五感で味わうチーズ体験。Zen Eating × パルミジャーノ レッジャーノ
文 曽宮岳大
写真 望月勇輝
※パルミジャーノ・レッジャーノが認定を受けるPDOとは:
パルミジャーノ・レッジャーノは、EUの原産地名称保護(PDO)に認定されているチーズです。添加物や保存料を一切使用せず、伝統的で自然な製法によって作られています。また、世界で最も模倣や偽造が多いチーズの一つでもあり、PDO制度はこのような製品の呼称や品質を守るために設けられています。
欧州連合規則 第1144/2014号に基づくプログラム101194314 ENSO-EU ― 欧州連合の共同出資による。
※EU規則1144/2014に基づく、EU支援の農産物販促プロジェクトです。

