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「Extra ordinàrio. イタリア人有名シェフ、ルカ・チャーノ氏が語る、料理人の哲学とパルミジャーノ レッジャーノ」イメージ

Extra ordinàrio. イタリア人有名シェフ、ルカ・チャーノ氏が語る、料理人の哲学とパルミジャーノ レッジャーノ

特別でありながら、本物であること。在日イタリア商工会議所(ICCJ)のガラディナーで掲げられたテーマ「Extra ordinàrio(特別でありながら、本物の価値)」は、イタリア料理の本質そのものを映し出していた。その一夜の食卓を手がけたのは、世界各地で経験を重ねてきたイタリア人シェフ、Luca Ciano(ルカ・チャーノ)氏。「素材への敬意」「シンプルであることの強さ」、そして「熟成が生み出す多様な表情」。彼の言葉を通して浮かび上がるのは、料理人にとってのパルミジャーノ レッジャーノとは何か、という問いである。

五感でイタリア文化を体験する一夜

イタリア文化の魅力を五感で体験する一夜。在日イタリア商工会議所(ICCJ)が主催する「ICCJガラディナー&コンサート」は、ビジネス界の著名人や在日イタリア関係者を含む約500名が集う、ICCJを代表する文化交流イベントだ。今年のテーマは「Extra ordinàrio」。特別でありながら、イタリアの暮らしや精神に深く根づいた“本物”の価値を、料理と音楽、そして人と人との対話を通して伝えることを目的に開催された。

会場では、海外から招聘されたイタリアの人気シェフによる一夜限りの特別メニューが振る舞われ、イタリア音楽シーンを代表するアーティストの演奏が、その世界観を立体的に描き出した。さらに、イタリアを象徴する一流ブランドのアイテムが並ぶ抽選会が、祝祭の空気をより一層高めていた。

なかでも、ゲストの記憶に強く残ったのは、料理を通して語られるイタリアの食文化そのものだった。素材への敬意、シンプルであることの力強さ、そして長い時間をかけて培われてきた味の哲学。それらを表現したのが、この日のメニューを手がけたシェフ、ルカ・チャーノ氏である。

世界各地のトップレストランで経験を重ね、現在もイタリア料理の魅力を発信し続けるルカ・チャーノ氏に、このガラディナーでの料理に込めた想いや、パルミジャーノ レッジャーノをはじめとするイタリア食文化への考えを聞いた。

ルカ・チャーノ氏 プロフィール

イタリア生まれ、現在はシドニーを拠点に活動するシェフ。ミラノの二つ星レストラン「Il Luogo di Aimo e Nadia」をはじめ、ロンドンやバミューダの名だたるレストランで経験を積んできた。2016年には、自身の哲学を反映したパスタソースやオリーブオイル、生パスタなどのオリジナル商品を発表し、オーストラリアおよびアジアで展開。Channel Tenのテレビ番組「Luca’s Key Ingredient」では司会を務め、料理を通じた食材の魅力を発信している。著書に『Luca’s Seasonal Journey』『Luca’s Culinary Journey』がある。

–世界のトップレストランで働いた経験から、何を学びましたか?

「おそらく、私が働いてきたすべての一流レストランに共通していたのは、食材の品質、そして食材に最大限の敬意を払う姿勢です。世界中の素晴らしいレストランやホテルで働くなかで、常に重視されていたのは、最高品質の食材を選ぶこと。そして、それらを丁寧に扱うことでした。レシピでやりすぎないことも大切です。主役となる食材をしっかりと生かし、その魅力を前面に出す。そして、自然とともに料理をする、つまり季節性を大切にすることです。たとえばパルミジャーノ レッジャーノのような食材も同じです。最大限の敬意を払い、冬には冬にふさわしい料理で、夏には夏に合ったかたちで、その魅力を引き出す。結局のところ、重要なのは食材の質の高さと、それをどう扱うかなのです」

–ご自身のウェブサイトでも、「フレッシュで、シンプルで、季節感のある料理」を大切にしていると書かれていますが、まさにこれがあなたの料理の哲学なのですね?

「はい、それはもう何年も前から私の哲学です。最初の質問への答えの延長でもありますね。“新鮮であること”は何より重要です。新鮮な食材を使うことで、料理の完成度は大きく高まります。そして“シンプルであること”。ナチュラルなチーズ、魚、肉といった素材があるなら、余計な技法や材料を加えすぎず、素材そのものに語らせる。さらに、“季節感”。私たちには四季がありますし、それぞれの季節に旬を迎える食材があります。フレッシュで、シンプルで、季節感を大切にすれば、成功率は100%だと思います」

–Lucaさんにとって、パルミジャーノ レッジャーノの魅力とは?

「やはり汎用性ですね。イタリア人として生まれ育つなかで、誰もがパルミジャーノ レッジャーノを食べて育ちます。シェフになってからは、熟成期間の違いによる個性をより深く理解するようになりました。最も若いものは12カ月で協会の認定を受け、一般的には16〜18カ月熟成のものが多く食べられています。そこから24カ月、30カ月以上と熟成が進むにつれ、同じチーズでも風味や食感がまったく異なってくる。そのおかげで、使い方は無限に広がります。」

「私はパルミジャーノ レッジャーノのジェラートまで作っています。前菜にも、パスタにも、リゾットにも合いますし、削っても、溶かしても、デザートやジェラートとして冷凍してもいい。本当に限界はありません。その多様性は、風味と同じくらい素晴らしいと感じています」

「たとえば、今夜のイベントでは若いパルミジャーノ レッジャーノを使って、チップスのようなクリスプを作ります。若いチーズは水分を保っているため、オーブンで焼くと理想的な仕上がりになります。一方、24カ月熟成はイタリアで最も一般的で、そのまま食べても、パスタやリゾットに削っても素晴らしい。30カ月以上になると、より崩れやすく、香りや味わいも複雑で個性的になります。こうしたものは、シンプルにそのまま味わうのが一番ですね」

パルミジャーノ レッジャーノのフォームとチャルダ

–塊のまま食べる場合、おすすめの食べ方は?

「退屈な答えかもしれませんが、とてもシンプルです。私は毎日パルミジャーノ レッジャーノを食べています。24カ月熟成のものを冷蔵庫に常備して、熟成バルサミコを少し垂らす。あるいは、フレッシュトマトとバジル、唐辛子で作った甘いジャムと合わせるのも好きです。家族の夕食を作りながら、つまみ食いのように食べる。それが日常です。正直に言えば、人生最後の食事でも、私はパルミジャーノ レッジャーノをそのまま食べたいですね。それほど完成された味です」

パルミジャーノ レッジャーノ茶碗蒸し

–日本の読者へ伝えたいメッセージは?

「パルミジャーノ レッジャーノについての理解は、実はイタリア人でさえ十分とは言えません。約1000年続く歴史、100%自然な製法、ミルクの質や職人の技。それらすべてが、このチーズを唯一無二の存在にしています。また、海外では模倣品も非常に多い。だからこそ、本物を見分ける知識を持ってほしいのです。パルミジャーノ レッジャーノは一つだけ。外皮に刻まれた名前を見れば、迷うことはありません。知識を得て、実際に食べ比べてみてください。本物を知れば、きっと他では満足できなくなるはずです」

ルカ・チャーノ氏の言葉から浮かび上がるのは、パルミジャーノ レッジャーノを「特別な食材」としてではなく、長い時間をかけて培われてきた文化そのものとして捉える視点だ。
ミルクの質、職人の判断、熟成の時間。そのすべてが重なり合って生まれるひとつのチーズは、料理の主役にも、名脇役にもなり得る。Extra ordinàrioとは、決して派手さのことではない。日々の積み重ねの中にある本物を見極め、正しく使い、味わうこと。その姿勢こそが、料理人の仕事であり、パルミジャーノ レッジャーノが1000年近くにわたり受け継がれてきた理由なのだろう。

Text:曽宮岳大
Photo:望月勇輝
Movie:Riku Watanabe

※パルミジャーノ・レッジャーノが認定を受けるPDOとは:
パルミジャーノ・レッジャーノは、EUの原産地名称保護(PDO)に認定されているチーズです。添加物や保存料を一切使用せず、伝統的で自然な製法によって作られています。また、世界で最も模倣や偽造が多いチーズの一つでもあり、PDO制度はこのような製品の呼称や品質を守るために設けられています。

欧州連合規則 第1144/2014号に基づくプログラム101194314 ENSO-EU ― 欧州連合の共同出資による。
※EU規則1144/2014に基づく、EU支援の農産物販促プロジェクトです。